人事部でなくても知っておくべき、人事担当者の年間スケジュール(1月~4月編)
企業の核となる人材を採用し、いかに生かしていくか。そこには人事部門がとても重要な役割となります。その動きを見直すべく、年間スケジュールを全3回に渡って見直していきましょう。まずは「1~4月」編をお届けします。
人事担当部門の年間スケジュール、把握していますか?
言うまでもありませんが、人事部門で扱う仕事は、大きく「採用関連」と「労務関連」に分けられます。今回紹介する内容のなかには、会社によっては総務部や経理部など、他の部署で扱うものもあるかもしれません。しかしながら、すべては人を生かすための業務です。現在自社に在籍する従業員、これから入社してくる新入社員、全員がこうした業務と関わっています。
採用関連では、4月に新卒入社員の対応、6月には採用活動が本格化、10月には内定式、年明けには受け入れ準備を整えるのが人事部門の役割。それに加え、中途採用者への対応が随時求められます。研修や、仕事に必要な道具の準備、職場環境の整備などもタイムリーに行わなければなりません。
労務関連の業務も、時期別に目白押しです。主だったものは下記のとおりです。
- 1月~ 3月:給与支払報告書の提出
- 4月~ 6月:定期昇給、健康介護雇用保険料率変更、住民税変更、労働保険料の申告書提出
- 7月~ 9月:算定基礎届、賞与計算、賞与支払届提出、被扶養者状況再確認リスト提出、高齢者・障害者雇用状況報告書提出
- 10~12月:新標準報酬へ変更、厚生年金料率変更、最低賃金変更、年末調整・賞与計算および賞与支払届提出
年間を通じて計画性が求められる業務と、毎月定期的に処理しなければならない業務が入り混じっているのが人事部の仕事の特徴です。1年のどの時期に、どんな仕事が行われているのかを把握して、無理のないスケジュールを組んでおくことが、自社の人材活用、人材育成の推進につながるでしょう。
人事部門の「1~4月」、スケジュールを詳しく紹介!
それでは、人事部の仕事を月別に具体的に紹介していきましょう。1~4月は、4月新年度に向けたさまざまな調整と、新入社員の受け入れ準備や入社後のフォローなどが重なります。
【1月】
前年中に所得税の年末調整を行い、1月10日までに源泉所得税の納付を、1月31日までに給与支払報告書を自治体に提出します。福利厚生や就業規則の見直しなどが求められている場合は、次年度からの刷新を目指してこの時期から調整を始めていきます。
4月の新年度に給与改定を予定している場合は、給与計算前に改定額を確定しなければなりません。1月以降の適切なタイミングで情報をオープンにしましょう。夏期賞与のための人事評価も進めます。
新年度に向けた人事異動計画がある企業では、社内での移動や勤務先異動によって引っ越しをともなうこともあるため、従業員の家庭事情や住居確保の面も考慮して1月頃から計画をスタートするのが理想的でしょう。
採用活動では、会社説明会の準備や使用する採用サイトの担当者との打ち合わせを進めます。コストが高額になる場合や諸々の調整が必要になると想定し、早めに動き出すに越したことはありません。4月入社の新入社員を対象にした研修の企画を始めるのもこの時期です。
【2月】
2月は、主に1月から継続した業務が中心です。4月に控える入社式の準備、新入社員研修の計画も具体化させていきます。デスク、パソコン、名刺、社員証などを手配して、新入社員を受け入れる態勢を整えていきましょう。
社員寮、社宅などがある場合は、年度変わりのタイミングが入退去の区切りになっているケースが多いため、必要に応じた手続きを行います。また、翌3月に定期昇給を行う企業では、賃上げに関連する資料収集を始める必要があるでしょう。福利厚生や就業規則の変更などの要望が出ていないかリサーチし、その対応にあたる企業も多いようです。
【3月】
翌月に控える入社式、新入社員研修の計画が万全に整っているか確認します。受け入れ部署のみならず、全社で歓迎ムードをつくり、経営陣と人事部が率先していち早く戦力化できるような体制をつくり上げておきましょう。
定期昇給を実施する企業では、査定と新給与額の確定を行います。また、就業規則の見直しを行った企業は、労働基準監督署に変更届を提出しましょう。
【4月】
新入社員の入社式、新人研修をはじめとする教育関連の業務が主となる1カ月です。各部門や担当者との連携が取れているか、新入社員が不安なく職場になじめているかなどを確かめて、随時フォローしていきます。翌年度の新卒採用に向けた説明会や、サイトでの情報発信なども並行して進めます。
さらに、労働者名簿の作成や更新、健康保険や年金など社会保険に関する手続も行っていきます。新規採用を行った際は、法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)を新たにつくります。
毎月必要となる月間ルーティンも並行して進める!
人事部では、それぞれの時期に応じた業務のほかに、毎月のようにこなしているルーティンの業務も多々あります。
- 給与計算:従業員の給与を正しく計算し、指定口座に振り込む
- 労働時間管理:残業時間、休日出勤、有給休暇を管理する。残業が上限時間を超過していないかのチェックや、有給の付与・消化状況を確認する
- 社会保険料納付:年金事務所に社会保険料を納付する
- 源泉徴収税納付:税務署に源泉徴収税を納付する
法改正が行われている場合もあるため、担当者は最新情報を収集しながら業務にあたります。また業務を効率化するために、積極的に新たな仕組みを取り入れるなど、意欲的に挑戦する姿勢が求められるでしょう。
まとめ(1月~4月)
1~4月の人事部門は、3~4月に新入社員対応があるものの、年間を通じて見ると比較的時間に余裕がある時期です。採用計画、就業規則、福利厚生などを見直すといった、入念な調整が必要な業務に時間を割くケースも少なくないでしょう。
しかしその一方で、トラブル対応や懲罰対応をはじめとする突発的な業務がいつ必要になるか分かりません。近年は職場環境を快適に保つため、従業員から相談を受けて対応する業務を担うケースも増えています。
年間スケジュールや、月間スケジュールのルーティンにとらわれない仕事が求められている現状があることも念頭に置いて、経営陣や他部署と連携を取るスタンスが求められるでしょう。
人事部でなくても知っておくべき、人事担当者の年間スケジュール(5月~8月編)
新卒採用、中途採用、人材育成、人事考課、人事異動、福利厚生など、人事部門の業務は多岐に渡ります。人事部門はまさに、人材活用の要となるセクションです。その業務を見直す全3回企画の第2弾となる今回は、「5~8月」の人事部門のスケジュールを掘り下げてみます。
採用関連業務は見直しが必要? 年間スケジュールを把握して最善を尽くす
一般的に新卒社員の入
社は4月、翌年度入社予定社員の内定式は10月、年末調整は11~12月、春と秋には人事異動があり、夏と冬には賞与支給に関わる業務と、大まかな流れがあるものの、採用業務は企業が人材募集を続ける限り際限なく続き、労務処理もまた、終わりがありません。
それゆえに、スケジュールを把握し、計画を立てて、人事部門がそれぞれの業務を適切に処理していくことが望まれます。まずは経営陣がビジョン、要望、計画を掲げ、人事部はその具現化に努め、実際に施策を講じていきます。
2020年は、新型コロナウイルス流行の影響もあり、採用関連のスケジュール管理やイベントの運営などは、思うようにいかないものが多かったのではないでしょうか。そしてその影響は、会社説明会、インターンシップ、採用面接など、さまざまな面に出ています。従来のやり方を見直さなければいけない傾向は、今後もしばらく続きそうです。
そんななか、通年での中途採用を重視する企業も増えているようです。新卒、中途採用を問わず、入社前後のフォローアップや、社員研修などの企画、運営は、人事部門が担う仕事です。企画してすぐに実施できるものではないため、入念にスケジュールを立てて準備を進めていきましょう。
毎月の労務処理や、各月ごとの労務処理の締め切りを守って進めていくほかに、人事評価、人事異動に関わる業務も、人事部門の重要な業務です。人事評価は昇給、昇格、賞与に関わるためミスは許されません。また異動は、引っ越しをともなう場合もあるため、期間に余裕を持って進める必要があるでしょう。
扱う業務が多岐にわたり、なおかつ、細やかな気配りも必要なのが人事部門の業務特徴の一つです。
人事部門の「5~8月」、スケジュールを詳しく紹介!
人事部門の年間スケジュールについてお伝えする企画、第2回目となる今回は、5~8月の流れを確かめていきます。前半の5~6月は新入社員の対応や、労務関連の処理が続きます。後半の7~8月は、内定者やインターンシップに関する対応があるものの、スケジュールに余裕が生まれる時期となります。
【5月】
5月は労働保険の年度更新の時期です。また、住民税の年度更新、通知書作成・発行なども行います。夏季賞与に関連して人事考査を実施し、額面の計算や決定を行うタイミングでもあります。
また、4月から引き続いて、新入社員対応が求められます。新入社員研修をはじめとする、人材育成関連の施策が、計画どおりりに運用されているかを確かめて、必要に応じて策を講じていきます。この時期に、既存社員向けの研修を行う企業も少なくありません。それも人事部の仕切りとなります。
採用活動としては、この時期から来年度に向けた社長面接や、内定承認に関する業務のとりまとめなどを行っていきます。
【6月】
人事考査の結果に基づいて従業員情報を更新し、夏季賞与支給の処理を行います。労務に関しては、社会保険料の計算に必要な算定基礎届や、労働保険年度更新申告書などの作成、提出を行います。
採用面では、翌年度入社の内定を出していく時期です。また翌々年度採用のエントリーシートが届き始め、インターンシップの受け入れ手続きなどもスタートします。
【7月】
高年齢者雇用状況報告書、障害者雇用状況報告書を作成し提出します。
インターンシップの受け入れ準備や、受け入れた学生への対応。また、翌年度入社の新卒社員の内定式の計画も、この時期から立て始めます。近年は、内定式に保護者を招待する企業も増えています。必要に応じて対応していきましょう。
【8月】
10月に人事異動を計画している企業では、その準備を進めていきます。
内定者に対するフォローも重要な時期です。問い合わせへの対応はもちろんのこと、内定者研修、内定者懇談会なども必要に応じて企画、開催します。
ルーティンだけではない突発的な出来事への対応も求められる
各月に行われる業務や、毎月の業務に加えて、人事部門には突発的な問題への対応も求められます。その例をあげていきます。
【労務トラブルへの対応】
セクハラ、パワハラ、モラハラ、マタハラ、パタハラといった、ハラスメントの報告があった場合は、即座に対応していきます。当事者へのヒアリングや周辺リサーチを行って問題を解消し、再発防止策を講じなくてはなりません。
【懲罰対応】
従業員が不祥事を起こした場合に、懲罰を決定するのも人事部門の仕事です。主要な従業員が参加する懲戒委員会を設置して、処分を決定している企業もあります。
【解雇対応】
社会情勢や経営判断によっては、リストラが必要となる場合があります。その際の対応全般を人事部門が担当します。
【人事異動対応】
組織変更があった場合は、人事異動の対応を担います。年度変わりや期の節目に行われる年に1~2度の人事異動は計画的に行えますが、突発的な異動も起こり得るため、随時対応していきます。
【中途採用】
欠員が出た場合の補充や、業務拡大のための増員など、急な対応が必要となる場合に、必要に応じて中途採用を行います。採用サイトの活用、面接対応、入社後の研修、労務手続きなども人事部門が対応します。
【退社の手続き】
退職者が出た場合は、労務関連の手続きや、退職金関連の手続が生じます。
【従業員へのサポート】
新入社員のフォロー、既存社員のストレスチェックやメンタルヘルス対策など、従業員が自社で快適に働けるような環境を整えるべく、多様なサポートを行っていきます。離職率を下げ、定着を促すためにも、重要度が増している業務です。
人事部門だけで処理するのが難しい業務は、他部署と連携を図り、また専任担当者のスキルアップを促すといった工夫をして、対応していくのが理想的でしょう。
まとめ(5月~8月)
5~8月は、労務では算定基礎届や労働保険年度更新申告書の作成と提出、採用では内定者の選考やインターンの受け入れなどが重なります。しかしそのうちの7月中旬~8月にかけては提出期限に追われる業務が少なく、まとまった時間を取りやすい時期です。
突発的な対応に追われることもある部門ですので、スケジュールに余裕がある時期を使って部門内をフラットな状態にし、10月に控える内定式や内定者フォロー、11~12月の年末調整業務などに向かっていく準備を整えましょう。
人事部でなくても知っておくべき、人事担当者の年間スケジュール(9月~12月編)
人事部門の業務は、企業に勤める誰しもに関わるものばかりです。「1~4月編」、「5~8月編」と2度に渡ってスケジュールについて見つめ直し、最終回となる本記事では「9~12月」の人事部門のスケジュールを掘り下げます。
1年のうちで、比較的スケジュールに余裕がある時期は?
人事部門の業務は、採用から教育・研修、人事考課、給与関連、異動など、多岐に渡ります。期限を守らなければならない業務も多いため、年間のスケジュールを把握し、効率よく仕事を進めなければなりません。
新入社員の受け入れ準備や入社後のフォロー、新人研修などが続く3~5月、そして年末調整をはじめとする多くの労務処理が重なる11~12月が、人事部門にとっての繁忙期です。その一方で、役所への提出期限に追われるような業務の少ない1~2月、8~9月などは、比較的スケジュールに余裕がある人事部門が多いと言えるでしょう。
スケジュールに余裕がある時期は、就業規則や福利厚生の見直し、各種研修の企画、繁忙期に備えた情報整理などに時間をあてていきます。この機会に、人事部門の担当者が、どんな時期に、どんな仕事をしているのかを改めて把握して、社内で連携を取っていきましょう。
人事部門の「9~12月」、スケジュールを詳しく紹介!
この記事では、人事部門の年間スケジュールについての最終回として、9~12月の流れを確認していきます。1~4月のスケジュールは前々回の記事を、5~8月のスケジュールは前回の記事を参考にしてください。
9~10月は内定式関連の業務、11~12月は年末調整をはじめとする労務処理がメインとなります。特に11~12月は労務処理が1年を通じてもっとも増える時期となります。
【9月】
内定式の準備を進めながら、秋採用の内定を出していきます。必要に応じて、翌春に向けた社宅や社員寮の物件探しなども始めます。
【10月】
秋の人事異動がある企業では、辞令を出します。冬季賞与の計算、額面決定などの業務もスタート。年末調整の準備を始める時期でもあります。書類の配布と回収、内容のチェックとデータ入力を行っていきましょう。
翌年度入社予定の新入社員を対象とした内定式を実施。内定者のフォロー業務も本格化していくでしょう。翌年度の新人研修も、この時期から計画を立てていきます。
【11月】
秋の人事異動があった企業では、それに伴って必要となる社員研修を行います。その企画運営は人事部門が担います。
所得税の過不足を精算する年末調整が本格化します。生命保険料の控除証明書をはじめ、員の個人情報を扱うことになるため、業務の進行には細心の注意が必要です。
採用面では、翌年度入社の従業員を対象にした入社前健康診断の実施や、社員証の発行といった業務を行います。
【12月】
住民税の特別徴収額納付、社会保険特別徴収額納付、年末調整、賞与計算および賞与支払届提出、源泉徴収票の作成・発行、健康保険料・厚生年金保険賞与支払届の作成・提出など、労務処理が集中します。集中的に業務を進められるよう、数カ月前から段取りや根回しなどを済ませておくと、現場の混乱が少なくて済むでしょう。
採用面では、必要に応じて、内定者研修をはじめとするフォロー策で、自社と内定者のパイプ役を果たしていきましょう。
時期を選ばず、通年で扱う労務処理をこなすのも人事部門の重要業務
毎月の業務の他に、人事部が通年で取り扱う労務処理も数多くあります。必要に応じて、次のような処理を随時適切に行っていきます。
- 出産一時金・出産手当金・出産育児一時金請求書
- 育児休業等取得者申請・終了書
- 育児休業給付受給資格確認票
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 高額療養費支給申請書
- 健康保険傷病手当支給請求書
- 厚生年金保険被保険者住所変更届
- 介護休業給付金支給申請書
- 療養補償給付たる療養の費用請求書
- 第三者行為災害届
- 労働者死傷病報告
- 休業補償給付支給請求書
また、適切なタイミングで従業員の健康診断を行い、診断結果を労働局に提出、医療機関への支払いを行うといった仕事も、人事部門の担当業務です。社会情勢の変化や、法律の改定などがあれば、それに対応していくことも求められます。
人事部門は、自社の従業員が目の前の仕事に集中できるように、さまざまな労務処理を集約的に担ってくれる重要セクションです。経営陣も、また他の部門も、その重要性を理解したうえで、連携を取っていくべきでしょう。
まとめ(9月~12月)
10月の内定式とその後の内定者フォロー、11~12月の年末調整業務など、秋から師走に向けて人事部門の仕事は多忙を極めます。その間に月間の業務や、随時必要となる手続きや届け出なども処理しなければなりません。業務量が増える想定のもとで、いかに業務効率を上げていくかは、部門として、企業としての取り組み次第です。
今回を含む、全3回に渡って人事部門の年間スケジュールを見直してきました。人事部門は従業員全員が関りのある業務をこなしているセクションです。そのスケジュールを全社で理解すれば、社内の連携も良くなり、いま以上に人材が生きる企業を目指せるようになるでしょう。